プラセボ手術って?
- 2008.03.23
【5】プラセボ手術って?
では、プラセボ手術、とはどんな場合に行われるのでしょうか?
例えば以下のようなシチュエーションです。
ある患者さんが非常に慢性的な腹痛を訴えていました。検査をしても全く異常はみられません。
心理的な原因と考えられて様々な精神安定剤などのクスリを投与されても全く効果がなく、患者さん本人は、
「お腹の中に絶対に病変がある」、と頑なに信じ、
「これを切除してくれないと自分は決して治らない」と主張しています。
その場合、医師の判断で、プラセボ手術が行われる場合があります。
実際に腹部を切開し、腫瘍など無かったとしても、そのまま調べるだけで傷を閉じます。術後の説明で「悪いところは全て取りましたよ」と説明することで、患者さんが心理的に満足して症状が軽快することがあります。
実際に手術を受けた、という事実と、医師からの説得力と真実味のある説明が患者さんを心理的に安心させ、症状を改善させたのでしょう。
しかし必ずしも同様に患者さん全てに成功するというわけではありません。
プラセボ放射線では次の例があります。
非常に難治性の病気があり、治療法が見つからなかった患者さんがいました。
主治医は色々と思案し、放射線技師と相談して偽の治療光線を当ててみることにしました。
主治医は患者さんに次のように説明しました。
「非常に効果の高い、新しい治療法が開発されました。それは一種の放射線であるが、何も感じず、副作用も全くない。一瞬浴びるだけで全身に行き渡り、短時間であなたの健康を取り戻すことが期待できるが、受けてみる気はありますか?」
患者さんは承諾し、治療室に入りました。そして派手な「ジー、ガシャーン!!」という機械が鳴り、一瞬で終了しました。
医師は、「はい、これで完了です」
治療の直後から、その難治性の患者さんの病気は、嘘のように劇的に改善したのです。
実際には機械の音を鳴らしただけで、X線はもとより、何の放射線も浴びせていなかったにも関わらずです!
これは笑い話で終わらせるべきではなく、心と体と病気の関連性の強さを示唆する例として重要です。近年では、精神神経免疫学 (Psychoneuroimmunology)と呼ばれる新しい医学分野で、このようなプラセボ効果についても真剣に研究されるようになってきました。
……続く