関節痛に効く?
- 2008.04.28
【7】「グル●サ●ン」「コン●ロイ●ン」 膝の痛みにどれほど効くか?
最近、テレビショッピングや新聞広告などで盛んに宣伝されている栄養食品として、「コンドロイチン」や「グルコサミン」があります。
主に変形性関節症などによる膝の痛みを緩和する、として、「体験談」も交えて盛んに効果を謳っていますね。一発テレビコマーシャルを打つと毎回大反響があるそうです。
当院、小豆沢整形外科にも変形性膝関節症による膝の痛みでお悩みの患者様が大勢通院されています。膝の痛みは50台を過ぎた女性に特に多くなります。初期には、立ち上がりや歩き始めの時だけに膝の内側に痛みを感じますが、徐々に進行すると歩行や立位で常に痛みを生じて杖が必要になってきます。
初期の治療は、膝の体操やシップや温熱治療などで対応しますが、ある程度膝の関節軟骨が磨耗が進んだ患者さんには、膝軟骨と関節液の成分である「ヒアルロン酸」の関節注射も適宜行っています。
関節内へのヒアルロン酸注射は続けて行うことで高い確率で効きます。関節注射治療の鎮痛効果と関節保護効果は科学的・統計的に証明され、優れた治療法としてその地位を確立しています。
その他、医療用の膝関節装具も治療と進行予防に効果的です。
一方、コンドロイチンやグルコサミン含有の健康食品はどうでしょうか?
コンドロイチンも、グルコサミンも、ヒアルロン酸も、いずれも「ムコ多糖類」と呼ばれる生体分子の仲間であり、軟骨や関節内粘液、組織の間を満たすネバネバ物質として体を構成する重要な物質です。
では、コンドロイチンやグルコサミンの健康食品を飲んでどのくらい膝関節の痛みに効果があるのでしょうか? 痛い関節注射をしなくても口からカプセルを飲んでいれば関節痛が治まり軟骨が再生するのでしたら、その方が病院で注射を打たれるよりも優れた治療法となりますから、私も非常に興味がありました。
最近、海外の医学研究でコンドロイチンなどのムコ多糖類の経口サプリメントの効果を科学的に検証する実験が行われました。
その結果は、残念ではありますが、プラセボ(偽薬)と効果に全く差が無かったということです。
つまり、「効くはずだ!」という思い込み効果が主たる効果であり、それ以上の効果は無い、という結論が出されました。
サプリメントで摂っても、まず腸管でどのくらい吸収されるかが問題です。ムコ多糖類は非常に巨大な分子量を持つ大分子です。腸管粘膜からの吸収率はごく僅かだと推定されます。
たとえ吸収されるにしても、小さく消化され分子が砕かれた上で血中に入り、肝臓などで作り直され、再び血液に乗って全身に運ばれ、血管の外に染み出して、組織にその材料が運ばれ、関節では滑膜細胞や軟骨細胞がその材料を取り込んだ後に、再びコンドロイチンなどを産生し、軟骨組織に蓄積して再生したときにようやく効果が出るか出ないか、という長く微妙な経路を辿っているのです。
……続く