素晴らしいCMが効果を高める?
- 2008.05.08
【8】素晴らしいCMが効果を高める?
たとえ、関節軟膏のコンドロイチン不足によって膝関節痛が出たとしても、
「では、コンドロイチンを沢山食べたら関節は治るはずだ!」
というのはあまりにも単純発想と言えます。生物の体はそんなに簡単ではありません。
関節軟骨のコンドロイチン巨大分子であり、吸収が難しい栄養素です。一度その構成要素である糖蛋白質をバラバラにして吸収してから、軟骨細胞がまた少しずつ作り出して関節に蓄積していきます。口から摂ったコンドロイチンが直接関節に運ばれていくわけではないのです。
しかし、関節内に直接ヒアルロン酸を注射する治療法は、膝や肩の痛みに効果があります。
ヒアルロン酸は、コンドロイチンと共通の構造を持つムコ多糖物質の一つで、その分子構造内に多くの電子(マイナス荷電)を持ち、プラス荷電した炎症組織を電気的に中和して炎症を鎮める効果がある他、そのネバネバ・ヌルヌルした性質から関節の摩擦を減らし、衝撃を吸収してくれます。浅い傷ならば関節表面の傷を埋めて滑らか動くように働いてくれます。更に、関節面の軟骨に微妙に染み込んで、少しずつですが、磨耗した軟骨の弾力を取り戻してくれる働きがあります。
ヒアルロン酸注射の効果は長年の科学的検証で統計的にも有効性が証明されています。もちろんプラセボ物質との比較対象試験も行われています。
それに対して、コンドロイチンやグルコサミンの(口から摂る)サプリメントは、生化学的機構から見ても関節炎症にすぐに効くとは考えにくいのです。実際、プラセボとの比較対照実験でもプラセボとの差が認められませんでした。
最近、アメリカ医療研究・品質管理局(AHQ)の研究報告によると、グルサコミンとコンドロイチンのOTCサブリメントは有効性を示す証拠がなく、多数の論文を検討した結果、効果はプラセボと同等であった、と述べています。
しかし、ここでよく注意してみて下さい。全く効かなかったわけではないのです。
「プラセボとの差が無かった」ということで、「プラセボと同等に効いた」という見方もできるわけです。
逆の見方をすると、プラセボもなかなか効く、とも考えられます。
コンドロイチンを飲んだ人の中には、確かに
「効いたような感じがした」
「痛みが軽くなった」
と実際に感じた人が居るのも事実なのです。
そして、「効いた」という人の多くは、CMなどを見て、
「これは効きそうだ」
「是非飲んでみたい」
と効果を強く信じた人だったいう傾向があります。
CMの出来が素晴らしいほど、そのように信じた人は多くなり、プラセボ効果が高く発現するので、「良い商品」として口コミが起こり、更によく売れることになります。
身近の人からの口コミ体験談も、飲む前に高いブラセボ効果を生み出す可能性がありますので、
「良いCM」+ 「良い口コミ・噂」を持つ商品は、薬理効果がほとんど無くても時に良く効くことがあります。
……続く