院長 平竜三のブログ診察室では伝え切れない、詳しい医療情報を語ります

ワクチン3回+コロナ感染後に出現した頸部激痛に 幹細胞液点滴が著効した一例

  • 2023.04.30

…決して疑わな者は半信半疑にもならない。
疑いがあるところに真実がある。疑いは真実の影である。

   アンブロース ビアス
   (アメリカの作家・ジャーナリスト)

                        

今回はワクチンとコロナ感染が混在した症例の治療経過をご紹介します。

ワクチン・コロナ感染 後遺症 40代女性

【症状】


左頸部から肩甲周囲への強い痛みとシビレ、全身倦怠感

ワクチン後に頸部神経痛が出現

【病歴】

3回目のワクチン接種の1か月後にコロナ感染。
ホテル療養中から左側頸部に痛みとシビレが出現。

発熱は軽く数日で解熱したが、隔離解除後に頸部痛とシビレが増悪し、左肩甲骨周囲にも波及した。全身の倦怠感も強く、家事が十分こなせず、日中も横になってしまう。

耳鼻科受診したが異常無しとされ、整形外科か脳外科を勧められた。
脊椎専門の整形外科受診し、軽度の頸椎椎間板の変性を認めるが症状と合致せず、原因不明とされ、対症療法の鎮痛剤を処方されたが、効果感じられず、強い痛みと症状が続いた。

発症から約2か月後に当院受診した。

【治療経過】

症状経過、神経学的診察、画像検査等により、元々脆弱性があった頸椎神経根が、ワクチン抗原およびコロナ感染後の炎症によって発生した活性酸素類によって炎症を起こし、疼痛過敏を生じていると考えられた。

ここで専門用語の「頸椎神経根」(Cervical Nerve Root)とは、頸椎の中心にある脊髄から枝分かれして、骨の外に出る枝の根本の部分の神経のことで、損傷を受けやすい神経組織である。

■グルタチオン点滴開始

過剰な炎症によって白血球(好中球)から大量放出された活性酸素の害を減らす必要があると考えられた。抗酸化物質グルタチオンを主成分とし、神経組織の回復促進のためにビタミンB群、基本ミネラル類を加えた混合点滴を開始。

開始から2か月間、グルタチオン点滴を2週に1回ペースで計4回、点滴を行い、自宅では高吸収ビタミンCと、CBDオイルの内服を続けた。

➔[結果]

点滴直後から若干の疼痛軽減は感じたが、効果の持続は3-4日。
点滴中のグルタチオン増量で効果延長が期待できるが、点滴中に吐き気の副作用が出るために増量できず。
(グルタチオンに害は無いが、少し硫黄臭があり、それによって吐き気やムカツキを生じる場合がある。)

■幹細胞上清液点滴開始


3か月目(5回目)から幹細胞点滴に切り替えた。

➔[結果]

幹細胞液点滴1回目の翌日から明らかな頚部痛の軽減を感じた。

その後1週以上効果持続を体感したのみならず、その間、倦怠感もなくなり、仕事や家庭の活動も元気にこなせた。

1週間を過ぎると、再び痛みが出てきたが、点滴前よりは軽い痛みで済んだ。

さらに2週於きに3回の幹細胞点滴を行ったところ、点滴の度に頚部痛は段階的に軽快。合計4回の点滴以降は痛み全く消失した。同時に倦怠感も完全に消失した。

全8回の点滴療法後は元の体調にもどり、仕事や家事も普通にこなせるようになったため、治療終了となった。

幹細胞液点滴が著効

【解説】

本症例では、活性酸素を減らすグルタチオン主体の点滴療法が有効と思われたが、十分効果を発揮できませんでした。グルタチオン成分を徐々に増量していくことで著効することがよくありますが、本系では体調の問題でグルタチオンを増量することが叶いませんでした。

しかし、幹細胞上清点滴に変更後は、非常に反応が良く、疼痛やシビレに著効しました。

幹細胞剔液の成分は、各種のサイトカイン類や成長因子が多種多様にバランスよく含まれていています。サイトカイン類はおおむね過剰な炎症を抑える一方、必要な免疫力は上げ、全体的にバランスを整えます。

また成長因子は、損傷した組織細胞の修復を助け、失った細胞があれば組織幹細胞の分裂増殖を刺激して、減った細胞の穴を埋めるように働きかけます。

今回の疼痛が幹細胞液で著効した事実から病態を考察してみます。

左片側の頸から肩への強い痛み発症の仕組みとしては、頚部神経根付近に集まった免疫細胞や、血管内皮、線維芽細胞などが、過剰な炎症性サイトカインを分泌し、それが慢性痛を発生させたと推定されます。

そこに幹細胞液の豊富な抗炎症性サイトカインが作用し、神経根周囲の慢性炎症状態を鎮静化させた可能性があります。さらに、幹細胞液に同時に混在している神経成長因子は、損傷神経組織を修復する作用がありますので、相まって効果を高めたのかもしれません。

【後遺症としての神経痛】

ワクチン接種の副作用として、さまざまな神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性頭痛(片頭痛など)が発現し、そのまま後遺症となって続く場合が稀ではありません。

しかし、ワクチンの副作用は、接種後に潜伏期を経て後から発生することが多く、そのためそれがワクチン副作用・後遺症であることに本人も医者も気付きにくい点に注意が必要です。
原因不明の痛みとして、長期間にわたって漢方薬や精神安定剤などを内服し続けて、全然良くならないという方は全国で非常に多いと推定されます。

既に日本では国民のほとんどがワクチン接種済です。

今までに経験の無い異質な痛みを感じたときは、ワクチンをいつ、何回まで打ったかを思い出して下さい。ワクチン副作用の可能性も考慮した方が良いです。
当然ですが、回数打つほど副作用の発現頻度は高くなります。ワクチンは薬物なので、増やすほど薬害リスクは増えます。

当院患者さんの治療経験から、最後のワクチン接種後1か月から半年後までの期間に、他にきっかけなく発生した体の痛みは、ワクチン後遺症の可能性があります。


痛みの診察に当たる医師の方にも、このことを診断の選択肢に入れておいていただきたいと要望します。

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